文字サイズ  背景色
English 한국어 简体中文 繁體中文

平成27年度第3回人権教育学級 いのちの花

土手のひがん花が画像01
夕日に
美しくはえとった

おひがんの日の夕べ
むらのじいさまが
五人衆(ごにんしゅう)について
さいごに語ったことばを
むらの人びとは
けっして(わす)れない

()かぬは 泣くに いやまさる」
じいさまの語りはつづいた



さて むかし
このむらの川のむこうで
狐葛(きつねくず)の葉」という芝居があっとった

いのちを助けられた狐が
美しい女に姿(すがた)をかえて 男のもとにあらわれた
そのうち子をうみ
かわゆうてたまらんかった
けれど 狐ゆえにそいとげることはできん
ある日 うたをのこし (おっと)と子のもとを
さっていったという
画像02

芝居(しばい)は 毎日 満員(まんいん)のにぎわいやった
ある日 見物にきていた(さむらい)のひとりが
ひどく酒によい 刀までふりまわした
だれもとめきらんやったが
町の若衆(わかしゅう)が五人ばかり
(さむらい)を外へ引きずりだし
(ふくろ)だたきにしたあげく
姿(すがた)を消した



この話は あっというまに 町中に広まった
「何としてでも 犯人(はんにん)をつかまえろ」
という きびしいお達示(たっし)がきた
だが どんなにさがしても 町のもんはかたく口をとざし
何のてがかりもでてこんかった
奉行所(ぶぎょうしょ)も ほとほとこまりはてた
画像03

ある日 このむらに
役人がやってきて
村長(むらおさ)を よびだした

犯人(はんにん)は おまえたちのむらのもんじゃ
五人の若者(わかもの)を さしださなければ
むらじゅう みんな
()きはらってしまうぞ」

「何で 何で(おれ)たちが犯人(はんにん)にされんといかんとや」
「今まで 一度も人間(にんげん)あつかいされたことのなか俺たちばってん
五人を()しだせなんぞ
あんまりじゃ」

「俺たちゃ 絶対(ぜったい)に 見にいっとらん」

「そりゃ ぬれぎぬやろうもん」
「もし 差しだしたら
どんなおとがめをうけるかもしれんぞ」

「もしも もしも
二度とかえって
これんやったら」

「いったい
だれをだせというとか」

「そげえゆうても
むらじゅうが
()きはらわれることにでもなったら・・・・・・」

「うちの息子(むすこ)は ぜったいやらん」
「うちのお(とう)は ぜったいにやらんばい」

「ぜったいに あのひとだけは・・・・・・」
画像04
むらじゅう
(きも)のちぎれるような
よりあいやった


その(ばん) むらは
夜のとばりに
すっぽりと
つつまれたごと
(しず)まり
かえっとった

木はだを
すりあうごと
松林(まつばやし)ばかりが
ヒュウ!
ヒュウ!
ヒュウ!て
さわいどった


数日後
五人が名のりでた
一番上が二十(はたち)
一番下が十四という(わか)さやった
十四の次八(じはち)は その前の(ばん)
(とう)から
むらをすくう門出(かどで)じゃけんて
前髪(まえがみ)をおとしてもろうた
よかあ若衆(わかしゅう)になったというて
みんなに (いお)うてもろうた
(かみ)()うおっ(かあ)(なみだ)
ぽと ぽと ぽと と
とまらんやった


よく朝 ほれ
そこの橋のところで
むらじゅうのもんが
()く泣く 見送った


いよいよ 処刑(しょけい)の日がきた
(はま)(かお)りが むらじゅうにしみる 風の日
やった
十字(じゅうじ)にはりつけられた五人が
河原(かわら)にさらされた

「はようつけ」
役人(やくにん)がどなった

つき(びと)は 頭を下げたまま
じっと 動かなかった

やがて
さいごの力をふりしぼるように
ひとり ひとり
すっくりと顔をあげ
空をにらんだ

役人が ぶる ぶるっとふるえだした
「はようつけえ」

とうとう つき人が走りだした

(おれ)たちゃ 人間(にんげん)(はら)からうまれた・・・・・・」
画像05




さいごの声は天に()った
たまのような いのちが五つきえた

その時 むらの土手の画像06
()きおくれの ひがん花が
川面(かわも)に まっ()にはえとった

あれから ひがん花は
なんども
地から わきたつように
()をだし 花を咲かせた


「やったぞぉ」
「とうとう五人衆(ごにんしゅう)(はか)
できたぞぉ」
こぶしをつきあげた若者(わかもの)たちの()がうるんだ画像07
百年のおもいをこめて ついに
むらびとの(ねが)いだった墓が
()った

「ほおれ これは
むらのみんなの
いのちの墓ぞ」
ばあさまは
(まご)に語りかけた
画像08
むらの墓所(はかしょ)の入り口に
ずっしりと(すわ)りつづけている
おおきなこの墓には
今日も 花が
こぼれるように
におっている

いのちはこのむらで
ずーっと生きた


資料:『いのちの花』 文:そのだひさこ 絵:丸木俊
2003年初版1刷発行
2008年初版4刷発行

お問い合わせ

共生社会実現・部落差別解消推進課 

〒874-8511 別府市上野口町1番15号 (市庁舎4F)

電話:0977-21-1291

Eメール:hur-le@city.beppu.lg.jp

別府市ホームページの使い勝手はいかがですか?
情報を探す
サイト内を検索する
分類・組織から探す
お問い合わせ
別府市役所 代表電話 0977-21-1111
ページの先頭に戻るTo the top of pageページの先頭に戻る