平成28年度第6回人権教育学級

日時: 平成28年11月10日（木）
場所: 別府市役所　5階大会議室
テーマ: 「男女共同参画基本法」ができるまで（女性と人権）
講師: 白土　康代　さん
元別府市男女共同参画審議会会長
元別府市男女共同参画センター設置検討委員会会長

講演概要

「参画」とは

「企画」「計画」段階から参加すること。

白土康代さん

歴史をたどってみましょう

戦後世界中は反省した・・・二度と戦争はいやだ。
GHQは「日本の女性は参政権など、いろんな権利がなかったので戦争を起こした」「女性の解放」が必要であると考えた。

戦前のこと

「姦通罪」（不倫や浮気などの罪）は女性（妻）だけに適用された。1947年に廃止になった。

優生保護法

1948年に優生保護法ができる。
戦前は国のために「生めよ増やせよ」の時代、戦後は国は貧しく、人口が増えると困るので「生むな増やすな」の時代。「優生保護法」ができ、中絶してもよいということになった。条件として、「経済的に厳しいとき」や「遺伝的にしょうがいを持って生まれるとき」などがあった。
優生保護法は世界の非難をあびて、1995年に名前だけは母体保護法となる。

売春防止法と児童買春の規制

1956年に「売春防止法」ができる。それまでは、国は認めていたが、法ができてからは仲介者は罰せられるようになった。また、女性の方は補導されたが、当の男性は罰せられることはなかった
「売春防止法」を補完するかたちで、2000年に児童買春を規制する法律ができ、当事者となる男性は罰せられることになった。

講演中

女性差別撤廃宣言と女性差別撤廃条約

1967年に国連は「女性差別撤廃宣言」を採択し、1979年には「女性差別撤廃条約」が採択された。
これによって日本も1985年に「女性差別撤廃条約」を批准する。
かっての日本では、女性は「30歳定年」や「結婚したら会社を辞める」などの慣行があった。
給料面では、男女同じ仕事をしていても、男性の給料の方が高かった。しかし、これをおかしいとは思わなかった時代だった。
このような男女差を不当だとして裁判を起こした女性たちもいたが、「女性のわがまま」だと受け取られ、バッシングを受けることもあった。
女性差別撤廃宣言が採択され、家庭での仕事や育児に対して、女性を評価せねばならないとしたが、性別役割分業についての考え方には変わりはなかった。
国連はいろいろな調査をするが、女性の地位の向上については、あまり進まなかった。
この頃から、だんだんと性別役割分業は問題であると気づいてきた。
「女性差別撤廃条約」の批准のためには、日本は法律的に三つの問題があったので、世界と一緒の流れにのることはできず、改正する必要（①～③）に迫られた。
最初に改正できたのは①「国籍法」のこと。日本は父親が日本人なら子どもは日本人となる。そのため、かっての沖縄では日本人の女性とアメリカ人との間に生まれた子どもは、無国籍となった。このような不合理なことがいろいろあった。
教育の平等から考えるとき、女子のみが家庭科学習が必修というのはおかしいということで、②「家庭科の男女共修」が始まる。
国際社会の後押しが日本に変化を与え、1985年に賃金格差や募集差別に関係して③「男女雇用機会均等法」ができた。

男女雇用機会均等法

法が出来たのにも関らず、配偶者特別控除の導入や公立保育園の予算が減らされるなど、アクセルとブレーキを一緒に踏んだような格好になっている。
「男性と一緒に働ける人は同じ給料を払いますよ」ということになったが、逆に女性は苦しくなる。男性なみに働かなければならなくなった。この時からパートが多くなった。
一般の女性労働者は反対したが、エリート層は推進しようとした。エリート官僚たちはまずは法を作ることが先で、その後内容の変更をしていこうと考えた。

女性の権利について

1989年「セクハラ」という言葉が流行語大賞をとる。「セクハラ」を深く考えることなく言葉だけが先行した。
この言葉が生まれたことからだんだんと「セクハラ」が意識され、法の中に入ることになる
会社などにも「セクハラ委員会」が設置されるようになる。
1995年、世界女性会議が北京で開かれ、北京会議では、ヒラリーさんが、女性の権利は人権（生まれながらに持っている権利）であると演説し、大絶賛を得る。
インターネットもエンパワーメントになり、世界に向けて自分の声を発信できる世になった。

女性の問題は人間の問題としてとらえることが大切

たとえば「骨そしょう症」という言葉は北京会議前後頃出てきた。老化により骨がもろくなるのは、それまでで「女性特有の問題」だからしかたないとされていたが、今では、医療現場も、男性中心に考えるのではなく、女性の身体も健康であるべき身体のひとつであり、女性の問題は人間の問題であると考えるようになってきている。

男女共同参画社会基本法の前文から

「国際社会との連動で進められたが、まだ十分ではない。」
「社会経済状況が変化したので、男女共同参画社会を・・・。」はおかしいのでは。世界情勢がどうあろうと、日本情勢・経済状況がどうあろうと男性として、女性として、お互い認め合い尊重しあわなければならないのではないか。
女性も「企画」や「計画」にも参加していくことが、男女共同参画社会の実現にとって大事なことです。

真剣に聞く参加者

現在のさまざまな取り組みや法整備は、男女平等に向けて世界全体で女性の問題に取り組んできた結果であり、長い時間をかけて、先人たちの努力があって、ここまできたということを知って欲しい。

※以上の「講演概要」は、講話者の話を事務局の責任で聞き取り編集しました。

班の話し合いから

長い歴史の中で、女性が社会で生きていきやすくなるために必要なことが、権利として確認されてきていることがわかりました。
結婚退職を言われたことがあり、素直に受け入れました。昔は女性と男性のあり方が違うのは当たり前で育ってきたので違和感を感じなかった。今の子どもたちは、仕事をする上でキャリアを積めば、社会や会社で男女平等に仕事ができると思う。

班での熱心な討議

女性として当たり前のことを見直すいい機会になりました。
現実にはまだ平等でないところも多々あります。法律では決められてはいるが、育休や産休もまだ取れる環境にない。
以前正社員で働いていたところにパートとして戻ったときに、うらやましいと感じた。今なら、やめずに働けるのになあと思った。
昔は男性への理解を求める時代だったけれども、今は同じ女性でも、独身女性にはなかなか理解してもらえないこともある。
最初に就職したときに個人のコップ（お茶用）を覚えさせられた。今はないようですが、時代の流れを感じました。
今日の話を聞いて、女性が働けるのは当たり前ではなかったんだなと思った

班からの発表

時代は変わってきているが、女性が都合のいいように利用されてきているのではと思ったりする。保育園の待機問題などを解消しないと働けないので、早く整えていかなければいけない。
女性が働きにくい環境におかれていることは、少子化などの問題につながっていると思う。
法律の名前は聞いていましたが、詳しい内容を知ることが出来てよかったです。法律が制定されても、現在社会の中では十分に生かされていないと感じました。
女性の多い企業では仕事がしやすい環境が整えつつあるように感じますが、男性が多く女性が少ないと、働きづらいと感じることも多いのではないかと思います。別府でも保育園の受け入れも大変厳しいので、もっともっと女性が働きやすい社会になるように期待しています。
ここ20～30年で女性の権利が少しずつ認められるようになったことを知った。親の世代とは随分違う。ストーカー、DVの事件は減らないし、まだまだ社会的な対応がなされていない。子育てと仕事の両立も、まだまだ厳しいと感じている。
年表がわかりやすかった。国際的な流れが日本の動きを後押ししていると感じた。法律が女性にとってよりよくなり、男女共同参画社会が実現することを願っている。

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