平成27年度第7回人権教育学級

日時：: 1月14日（木）
場所：: 別府市役所　5F大会議室
テーマ：: 「障がい者と人権」
～知的障がいのある人の支援を通して～
講師：: 小野落　周　さん
社会福祉法人杵築・速見のぞみ会樹の実園園長

講演概要

▲は内容の概要

1　樹の実園の紹介

園訓　・きたえあい　　　・のばしあい　　　・みとめあう

▲樹の実園の沿革・役割

講師　小野落さん

昭和60年10月に小規模作業所として設立後、63年4月に通所授産施設となり、多くの心ある方々に支えられて現在に至る。杵築市、日出町、国東市に在住する知的に障がいのある45名の利用者が、それぞれの自立をめざし、住み慣れた地域において、家庭や地域の一員として、安心して暮らせる地域生活を送るために必要な生きる力を身につけ、伸ばしていくことが当施設の役割と思っている。

▲自立をめざした具体的な取り組み

生産活動⇒: ・市の委託（公園清掃）や再委託（ペットボトルリサイクル処理）
・その他

⇒支援していただいている市民の皆さんの生活に役立つ仕事に従事しているものと理解している。

2　障害福祉サービスの概要

（資料参照）・・・「障害福祉サービスの利用について」（全国社会福祉協議会編）

3　障がいのある人の人権

ナチスの遺伝性疾患子孫防止法（断種法）と安楽死計画（T4作戦）

▲1933年～1945年にかけてナチス・ドイツでは、精神的または肉体的に「不適格」と判断された数十万の人々に対して強制断種が行われ、安楽死計画により戦争遂行に寄与できない障がい者を「生きるに値しない命」とみなし抹殺、排除した。
また、スエーデンやスイスなどにおいても1970年代～1980年初頭まで、精神障がい者や知的障がい者に対する強制断種を含む優性学プログラムが実行された。日本にあっても戦前・戦後を通して断種手術が行われた。

講演中の先生

日本国憲法
基本的人権を「侵すことのできない永久の権利として」保障

▲三原則
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義
障害者の権利宣言（1975年国連総会で採択）

▲障がい者の基本的人権と障がい者問題に関する指針を示した。このことが国際的な動きとなる。
障害者の権利に関する条約（2006年国連総会で採択）

▲日本が批准するのに国内法の整備が必要であり、7年後の2014（平成26）年に条約を批准した。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
（平成28年4月1日に施行される）

▲「障害者の権利に関する条約」の締結に向けて、国内法整備の一環として平成25年6月に公布。

4　身近な出来事

講演を聞く受講生

ある日学校に来なくなったA君

▲自分が小学生のころ、障がいのある妹を持つA君。同じ地域の子からからかわれていた。彼は一時的ではあったが学校にこれなくなった。
「カバンがねくなった」

▲バスターミナルでカバンを置き引きにあったKさん。警察にも届けたが、言葉が苦手でうまく伝えることができず、遺失物として処理された。
「10人位おるじゃろうが」

▲企業から障がい者を10人ほど雇用したいとの要望があった。
事業主は障がい者は皆同じと思い込んでいて、障がいの特性や能力も1人ひとり皆違うことを理解してもらえなかった。
「『害者』の妹が来た」

▲障がいのある兄を持っている妹さんを見かけると、周囲の子どもたちが「『害者』の妹が来た」と。
「どこにそげん銭があるんじゃろうか」

▲自立をめざし、市外でアパートを借りて生活するようになったIさんがいた。彼の実家近くの人たちから、「アパート代をはろうて・・・！どこでそげん銭が・・・？」と。
タクシーに乗ってシートベルトを締めようとしたら運転手さんから一言

▲60代のSさんがタクシーに乗り、運転手さんにシートベルトのことを尋ねたら、「いいんじゃ、そのままで！！」と冷たくあしらわれ、結局シートベルトがができないままだった。
「じぶんのことを言われているような気がして嫌だった」

▲職員２人が話をしていた。それを見た通所者が「何か自分の事を言われているような気がして嫌だった」と訴えてきた。よくよく事情をお互いから聞くと、まったく誤解であることがわかった。
誤解は解けたが、職員の言動により不快を感じさせたことを謝罪した。

5　終りに

▲「人の身になって考える」ことが大切である。障がいのある人の尊厳が守られ、豊かな人生を自己実現できることを願ってやまない。

班での話し合いから

班での話し合い

とてもつらい話もありましたが、健常者・障がい者を育てている親同士が話し合う機会が持ててよかったです。このような機会をもっとたくさん持てるとよいと思う。
なかなか障がい者の方と話す機会がないのでどう接していけばよいのかわからない。
まだまだ健常者を育てている方にはわかっていただけない事がたくさんあります。
障がい者理解のためにも、市の方でも自閉症のポスター等を作って、人の目につくところに貼って欲しいです。また、このように話し合う機会があると、わかって頂けるので、もう少しこのような機会を増やして欲しいです。
近年、制度が整ってきて障がいのある子どもをいくらか育てやすくなってきた。しかし、一人ひとりの子どもをしっかり理解した上で支援をしていかないといけない。
障がいを受け入れて、それが当たり前で生きてきているので相手がどうとかではなくて、障がい者本人や家族がなれていくしかないと思っています。だから特別扱いをしなくても大丈夫です。普通の子どもと同じように接して欲しい。障がい者の条例があることはありがたいのですが、条例に頼るのではなく、さまざまな困難に耐え得る人になって欲しい。
歴史上からも、障がい者に対して信じがたい差別があったことに驚いた。ドイツのナチスについての勉強も必要だと感じた。

班からの発表

身近な出来事についてもっと聞きたかった。また、口にしなくても心の中で、障がいのある方に対して「かわいそう」など思い、知らないところで差別しているかも知れないと思った。
違いがあるとバカにしたりということがある。違いがあることを認め合うことが大事なのではないか。
立法や制度だけでは変わらない。もっと意識することや、イメージを変えていくことが大切と思う。
情報を得る場は少ない。もっと正しい知識を持てる学習の場をさらに増やして欲しい。
学童期から、もっと交流の場を持ちながら成長することで、更に知識や理解も深まり、抵抗感なども少なくなるのではなかろうか。機会が少ない。
障がいのある・なしに関らず、人と接する、理解することの難しさを改めて感じた。
みんながいろんな人と触れ合っていくと「心のバリアフリー」になる。
肢体不自由の方と接するとき、その方のプライドを守りながら、どこまで手を出したらよいのか悩むことがある。
障がいと言っても外見ではわからない人もいる。どう接すればいいのかわからない。
子どもはすぐ言葉に出してしまう。その都度説明をと思っているが、子どもがまだ小さく、理解できないでいる。
親として、子どもにどのように教えていくかが大切だと思うが、事象によっては難しく悩む。
大人の方から向けられる姿勢が悪い。親が変わっていかなくてはと思う。